STILLNESS
私たちは今、絶え間なく更新される情報の中で、一秒たりとも無駄にしたくない「タイパ」の時代を生きています。効率的であることが評価される一方で、ようやく確保したわずかな余白でさえも、SNSや動画、ゲームなどの消費に充ててしまう。それは私たちが本当に望む時間の使い方と言えるでしょうか。
この作品は、そんな情報過多の現代において見えづらくなった「時間の感覚」と「人とのつながり」を再考するための試みです。
複数の三角形で構成された壁面装飾は、まるで木漏れ日やきらめく水面のように角度の変化によって光を反射し、ゆるやかにその表情を変えていくことで、数字だけに頼らずとも時間の流れを感じさせてくれます。
さらにこの構造は、家族へのメッセージを残す媒体としても機能します。ふとした言葉や気持ち、伝言などを「置手紙」のように残しておくことで、お互いの存在をさりげなく確かめ合うことができます。
効率を求めすぎて生き急ぎがちな現代において、時間のゆらぎと人のぬくもりを取り戻すことを目指しました。
Kodai Shimizu
未来の当たり前をつくる」をキーワードに活動するデザイナー。現代社会への問題提起を起点とし、最終的な媒体にとらわれず、プロセスを重視したデザインを実践している。オランダのデザインアカデミーアイントホーフェンでの卒業制作「Craft-techmen Project」では、大量生産と工芸技術の衰退をテーマに、修理可能な家電群を提案。このプロジェクトは、Wallpaper Magazineや、AXIS(web)、ELLE Decoration NLなど、国内外のメディアに多数取り上げられた。2023年からは大阪芸術大学アートサイエンス学科で非常勤講師を務め、社会におけるデザインの可能性を次世代に伝える活動も行なっている。