DESIGNTIDE TOKYO

ALP Shelf

エーエルピーシェルフ

プロダクトは、その起源から道具として実際に機能することこそがその本質だが、いつしか世界では、優れた道具に身体で触れる機会より、そのプロダクトの“画像情報”に触れる機会の方が上回ってしまうようになった。その結果、作り手の意識の上でも、道具の使い勝手や建築空間での実体験より、スマートフォン上のフォトジェニックな表現を優先する傾向すら生まれ、“視覚情報伝達”に偏重したアンバランスな状況が進行している。そのような課題意識に着想を経て、本イベントでは“視覚情報伝達が成立しないデザイン”をあえて提示できないかと考えた。それは写真という装置の弱点を考慮すると、つまりは量感や陰影などのリアリティが欠如したものではないか。そんな思索を進めるうちに、スタジオの片隅に置いてある厚さ3mmのアルミ複合板と、釣り糸が目に入り、量感に著しく乏しい、テンション構造を利用した、軽やかな家具を作ることを思いついた。“視覚的な”モニター上でモックアップを進めていくなかで、特定のアングルから見た時に、ふと物質感が完全に消えて、純粋な線だけの画面が現れてハッとした。「全然伝わらない」。これで良いと思った。現実世界で道具として機能する存在と、メディア上で視覚情報として流通する存在の差異について考えるきっかけになればと思う。

川浪 寛朗

デザインディレクター/プロダクトデザイナー。Studio ShirotaniにてKINTOのプロダクトデザインに携わった後、日本デザインセンター・原デザイン研究所にて、企業のブランディングやプロモーションから、展示計画、サイン計画、プロダクトデザインまで幅広いプロジェクトを担当。独立後、アウトドアと都市生活の相互性をテーマに活動を始める。hxo design(台湾)の日本展開を開始。CYCL(山中湖)のクリエイティブディレクター。デザインのカテゴリーを横断し、コンセプトワークから平面・立体・空間まで、一貫したディレクションとデザインを行う。

https://www.instagram.com/hikw__h/
EXHIBITION / AWARD
  • 2019: Good Design Award / Best 100, Tokyo, Japan
  • 2020: Red Dot Design Award / Essen, Germany
  • 2024: IF Design Award / Hannover, Germany
  • 2024: D&AD Award / London, UK 2024: Topawards Asia / Tokyo, Japan