DESIGNTIDE TOKYO

Bang Lang

バンラン

コロナ禍の重たい雰囲気も薄れてきた2023年初夏に訪れた香港島。湿気や匂い、年代も大きさも不揃いなビル郡などに、久しぶりに日本を離れた感覚を強く印象付けられた。街の至るところで見かけた竹製の足場もそうした要素の一つだった。高い湿度によって鉄が錆びやすいこと、コスト、軽さ、処分の容易さなど、さまざまな理由から、香港では今でも多くのビルに竹製の足場が使われている。そのしなやかで軽やかに組まれた竹の構造は、自然素材と都市のエネルギーが融合しているように見えた。

Bang Langは、香港の竹の足場の記憶を家具のスケールに再構築したもの。竹をペーパーコードで縛り、接合部を漆で固めることでフレームを組み上げている。漆は日本の伝統的な仕上げ材として知られるが、同時に強固な接着剤でもある。漆の硬化には特定の湿度と温度が必要で、その条件を満たす「漆風呂」は湿度70%から85%、温度20℃から30℃に保たれており、香港の気候に非常に近いものがある。この偶然の一致に、私は2つの文化が意図せずして交差する瞬間を見出した。コロナ禍を経て再び異文化と触れ合った経験を元に制作したこのシリーズでは、竹と漆という自然素材を用いながら、都市のダイナミズムをより小さなスケールで表現することを目指している。

Siin Siin

Siin Siinは東京を拠点とするデザイナー。金沢美術工芸大学で製品デザインを学び、日本、オランダ、デンマークのデザイナーや建築家に師事した後、2021年に自身のスタジオを設立。家具など少量生産のオブジェクトの制作を中心に、建築家やファッションブランドとのコミッションワークや、オブジェクトのコンポジションとしてのインテリアデザインやインスタレーションの制作なども手掛けている。

https://www.instagram.com/siin_____siin/
EXHIBITION / AWARD
  • 2022: Zui Conn, Licht Gallery, Tokyo, Japan
  • 2022: Un Sua, Moriyama House, Tokyo, Japan
  • 2022: El El, Isetan Shinjuku, Tokyo, Japan